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ココ・ファーム・ワイナリー

知的ハンディを持つ人達の自立を目指して作られたこころみ学園の葡萄畑は、今年で50周年を迎える。こころみ学園園長が、この土地を買い、園生に葡萄の木を植えさせたことが始まりだ。初めは、ワインを造ろうと思っていたわけではなく、葡萄を育て、収穫し、食べるということを学ぶ活動の一環だった。そんな形になるまで10年という月日がかかる。
あるとき、園生の1人が葡萄のジュースを飲み「酸っぱい!」と言ったそうだ。その言葉を聞いた園長は「これはワインだ!」と思ったそうだ。酒税法などの規制があり、ワイナリーとして活動できるようになるまで、更に10年。ココ・ファーム・ワイナリーの誕生である。

日本のワインをどうしても好きになれない私。
でも、ちゃんと飲んでもいないのに「好きじゃない」というのは、おかしい話。
作っている人達に会って、話を聞いて、背景まで知って飲んでみたい気になった。
葡萄畑というのは、実に美しい。そんな風景も見たくなった。
日帰りでいける「ココ・ファーム・ワイナリー」は、色々な意味で前々から行きたいと思っていた場所だった。

「よし!今日だ!」
素晴しい秋晴れに誘われて、出かけていく。

浅草駅から特急電車で1時間10分。足利市駅で下車。
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足利市駅からはタクシーで20分弱。値段にして2,100円程度。
見事な葡萄畑の横にタクシーは到着した。
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西から南に湾曲した面は、太陽の光をたっぷり浴びた葡萄の木が美しく並んでいた。
風も程よく吹き、気持ち良さそうに葡萄の葉が揺れる。

平均斜度38度、一番急なところで45度あるという葡萄畑。
立っているのもやっとだろう畑で、こころみ学園の生徒たちは、葡萄を手摘みする。
転ぶことなんて日常茶飯事。

「大丈夫か~?」
「はい、痛くないっす。」
「お前じゃない。葡萄は大丈夫かって言ってるんだ!」

なんて言いながら葡萄摘みをすると、大事に、大事に、転ばないよう気をつける。そうすることで、身体のバランス、心のバランスを取ることを覚えるそうだ。摘み取った葡萄は、一粒一粒、丁寧、良いもの、悪いものに分ける。小さいワイナリーならではである。
作業している横にいると、葡萄の甘い香り。蜂もいっぱい寄ってきて。
そんな外野には気づかないほどに集中して、ひたすら作業する。
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時折、パンパンパンと太鼓をたたく音がする。カラスを追い払う係りだそうだ。
1日中、葡萄畑の天辺に立ち、葡萄を見張っている。
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ワイナリー見学(カーブなど見せてもらい1時間程度:500円)のときに仰っていた。
こころみ学園の生徒たちは、確かに知的ハンディがあるかもしれない。パンフレットの紙を二つに折り、間に紙を1枚挟むことができても、2枚挟む作業になるとパニックに陥る。しかし、普通の人なら30分で根を上げてしまうワインの中の異物をチェックする作業(特にコルクの破片など、異物が見つかることはほとんど無いが、ほとんど無いことがあってはいけないことからなされる作業)など、何時間でも集中して行うことができるし、見つけ出すことができる。例えば、私たちには読めるけれど書くのが難しい漢字がある。それを一度見ただけでサラサラと書いてしまうことができる。パッと見せた数字を一瞬に計算してしまうことができる。彼らはこれという特殊な能力を持っている。それは特別じゃなく、個性なのだと。そして彼らは、自分の仕事だと思ったことに対して、手を抜くことを知らないのだと。こころみ学園は、そういった自分の仕事と思うことを、生徒から見つけ出し、与え、安心して生きていける願いを込めたワインを造っているのだと仰った。
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ワインのことが書きたいのか、こころみ学園のことを書きたいのか、わからなくなってしまったけれど、このココ・ファーム・ワイナリーは、こころみ学園があってのワイナリーなのだ。
社会で仕事に就けない人達が、自分の名前も書けない人達が、葡萄を育てる農夫になり、葡萄を守り、ワインを造る。

一通りワイナリーを散策し、そんな彼らのワインを頂いた。
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オークバレル 2005
カリフォルニア・ソノマの自家農園のメルローと、国内農園のメルロー、ノートン、マスカットベリーAを使い、樫の木の樽で熟成させた、力強いフルボディの赤ワイン。
コルクを抜いたら1~2時間おくか、デキャンタすると香りが華やかに。

障害を声高に叫ぶ事なく、1杯のワインが今日あることの喜びのためにありますように。
そしていつの日か、大地を相手にひたむきに生きる農夫たちの日々から生まれたワインが
美しい絵画や音楽のようにわたしたちの心を豊かにさせてくれますように。

<某サイトより抜粋>
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by meow-ee-ow | 2007-10-09 22:55 | お酒 | Comments(0)